
DECO*27さんの楽曲「カイコ feat. 初音ミク」は、「可愛いのに狂気を感じる」そんな矛盾した魅力を持つ一曲です。
タイトルの「カイコ」には・・・
- 回顧(過去への執着)
- 解雇(関係の終わり)
- 蚕(変化や再生)
という3つの意味が隠されており、DECO*27らしい多層的な言葉遊びが光ります。
本記事では、その3つの意味を軸に「カイコ」を徹底考察。
さらに、『愛言葉』や『乙女解剖』といった過去作との共通点から、“愛の喪失と回顧”というDECO*27作品に通底するテーマを深掘りしていきます。
MVに登場するトゲトゲのハートや茨は、まさに「変わってしまった恋」を縛りつけようとする心の象徴。
ポップで可愛いのにどこか病んでいる——そんな“愛の痛み”を描いた世界観を、今回は丁寧に読み解いていきましょう。
歌詞
Arrangement: DECO*27 & Hayato Yamamoto
カイコが示す3つの意味
「待って置いてかないで」「巻き戻って好きでいたい」というフレーズから、主人公は“過去のままの相手”を求めていることが分かります。
恋人が変わっていくことを受け入れられず、「これじゃない」「きみじゃない」と拒絶しながらも、“あの頃”の愛を取り戻そうと必死にもがいているのです。
“カイコ”という言葉には「回顧(過去を振り返る)」だけでなく、「解雇(関係の終わり)」や「蛹(さなぎ)のように変わる」という意味も重なっています。
この多重的なタイトルセンスこそ、DECO*27らしさの真骨頂です。
カイコの意味を考察
- 回顧
- 解雇
- 蚕
「好き」が壊れていく瞬間
サビで繰り返される「好き 好き 好き…」は、一見かわいらしくも、どこか“壊れかけた愛”を感じさせます。
愛しているはずなのに、その“好き”が次第に呪いのように変化していく。
そして、「だった」という一言の直後、すべての熱が一瞬で冷める構成が見事です。
「過去形になった愛」への未練と絶望・・・
そのすべてが、この短い一言に凝縮されています。
「カイコしてロンリー」
「カイコしてロンリー しなくてもロンリー」という歌詞は、“別れても孤独、別れなくても孤独”という矛盾を描いています。
つまり、主人公にとって“愛”はもはや幸福ではなく、「昔の恋を回顧し続ける苦しみ」そのもの。
「きみが楽しそうで」など、相手の幸せさえも嫉妬の対象になっている描写が痛々しく響きます。
MVの演出が象徴する“愛のトゲ”
DECO*27 – カイコ feat. 初音ミクhttps://t.co/Do4xa1AkMk
DECOさん新曲「カイコ」に@lowpolydogさん、ディレクションのもと映像を担当しました!
よろしくお願いいたします!!!!! https://t.co/npoEqr6Txc pic.twitter.com/8JF5uB2hHm
— Naoki Hasegawa (@_NaokiHasegawa_) November 7, 2025
トゲトゲのハートが登場するシーンは、「愛が痛みに変わる瞬間」を象徴しているようです。
- ハート=愛
- 茨=束縛や嫉妬
この2つが融合した“トゲの心臓”は、まさに「壊れた恋心」のビジュアル化。
DECO*27らしい、ポップで病んだ世界観が際立ちます。
過去への執着が“生きる意味”になってしまった主人公
「きみが歩く足 引っ張ることがあたしの生きる道」という歌詞は、非常に象徴的です。
もう愛されなくても、もう過去に戻れなくても、“引きずること”自体が生きる理由になってしまった。
この歪んだ愛の形こそ、「カイコ」の核心といえるでしょう。
MV考察
イラストを担当いたしました 🤍
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— 八三 (@xxhachisan) November 7, 2025
この色彩の制限こそが、「過去を思い出している=回顧」というテーマを象徴していると考えられます。
彩りを失った世界は、“もう終わってしまった恋”を振り返る主人公の視点そのもの。
すでに現在進行形の恋ではなく、「記憶の中でだけ動く愛」を描いているようにも見えます。
茨とトゲのモチーフ:痛みを伴う愛の象徴
MVの中で頻繁に登場する茨やトゲの心臓は、「好き」という気持ちが次第に“痛み”や“呪い”に変わっていく過程を象徴しています。
- 茨=束縛・嫉妬・自己防衛
- トゲのハート=壊れてもなお手放せない愛
特に間奏で登場する「ハートと茨が融合した心臓」は印象的。
かつての純粋な愛(ハート)が時間とともに傷つき、トゲ(痛みや執着)に覆われてしまった“変質した愛”を視覚化しているようです。
可愛いミクが病みを抱える「二面性」
MVに登場する初音ミクは、どこか幼さの残る可愛い姿で描かれています。
しかし、その表情には常に影が差しています。
可愛いのに、どこか壊れそう。明るいのに、どこか寂しい。
この「表面的な可愛さと内面的な狂気」のギャップこそがDECO*27作品の魅力であり、「カイコ」ではその対比が特に強調されています。
モノクロの中の“回顧”と時間の停止
モノクロ映像の演出は、時間が止まったような印象を与えます。
過去の記憶に閉じ込められた主人公は、「巻き戻って好きでいたい」と願いながら白黒の世界を彷徨っているのです。
色が戻らない=現実に戻れない。
つまり、“回顧(カイコ)”=過去への逃避というテーマが、映像のトーンそのものに刻まれています。
病みポップという美学
「カイコ」は、ポップでキャッチーなメロディに“病んだ愛”を乗せた病みPOP ROCK。
MVでも、可愛らしさと狂気が絶妙なバランスで混ざり合っています。
それはまるで、「痛みを可愛く飾り立てた愛」。
DECO*27が一貫して描いてきた、“恋の歪さと愛のリアル”が凝縮された映像表現だといえるでしょう。
【DECO*27作品比較】「愛言葉」「乙女解剖」との関連分析
【🩶⛓️💥Works💔】
DECO*27 – カイコ feat. 初音ミクhttps://t.co/fkOYRPn7wH
MVをOTOIROで制作しました!
私はMVディレクション / アートディレクション、
ロゴやタイポなどのデザインまわりを主に担当しています! https://t.co/o3AUTIjQpm pic.twitter.com/loUEmR5LMg— lowpolydog (@lowpolydog) November 7, 2025
「カイコ」は、DECO*27が長年描き続けてきた“愛の歪み”や“自己矛盾”を、さらに内面的に掘り下げた作品だと言えます。
同じく代表作である「愛言葉」や「乙女解剖」と比較すると、テーマの進化や愛の表現方法の変化が見えてきます。
「愛言葉」
「愛言葉」は、DECO*27が初音ミクへの“感謝”と“愛”をまっすぐに綴った曲です。
《君がいるなら どんな時も笑えるんだ》というように、愛を前向きに捉えた作品で、支え合う関係が描かれています。
つまり、“他者を想う愛”が中心にあります。
「乙女解剖」
一方で「乙女解剖」では、愛が快楽や痛みに結びついていきます。
《乙女解剖であそぼうよ》というフレーズが示すように、恋愛感情が「解剖=暴き・傷つけ合い」のメタファーに置き換えられています。
愛の形が純粋さから“執着”へと変化し、ここで初めてDECO*27の“病み×恋愛”という世界観が明確に定着しました。
「カイコ」
そして「カイコ」は、その延長線上にありながらも、さらに“愛の残骸”を見つめる曲です。
タイトルの「カイコ(回顧)」が示すように、すでに終わってしまった恋愛を、過去の記憶として反芻しています。
《タイムマシンってまだないんだっけ》という歌詞は、失われた時間にすがる“後戻りできない恋”の痛みを象徴しています。
また、「乙女解剖」で見られた“愛の暴走”が、ここでは“愛の喪失”と“自己執念”に変化。
つまり、「愛言葉」→「乙女解剖」→「カイコ」という3曲は、「純愛」→「依存」→「喪失」
というDECO*27の愛の三段変化を描いた軌跡だと考えられます。
DECO27における“愛の循環構造”
DECO27の作品世界では、愛はいつも「生まれて」「壊れて」「思い出になる」という循環を繰り返します。
「カイコ」はその“記憶のフェーズ”を描いた楽曲であり、「愛言葉」での始まり、「乙女解剖」での壊れ、「カイコ」での回顧
この三作を通じて、愛の始まりと終わり、そして再生という一連の物語が浮かび上がります。
まとめ
モノクロで描かれるMVは、主人公が「過去の恋」に閉じ込められたまま抜け出せない心象世界そのもの。
- モノクロ=過去の記憶、時間の停止
- 茨=痛みと束縛
- トゲのハート=変質した愛
- 可愛いミク=表の笑顔と裏の狂気
これらのモチーフが絡み合うことで、“過去の愛に依存して生きる痛々しい美しさ”が浮かび上がります。
「カイコ」は単なる失恋ソングではなく、「愛の終わりを、愛したまま生きる人の物語」なのかもしれません。
- 愛しているのに、変化が怖い
- 過去のままの恋を求めてしまう
- 「好き」が呪いに変わっていく
DECO*27さんは、そんな壊れかけた愛情をポップなサウンドとミクの可愛い声で包み込み、“痛みすら美しい”世界に昇華させています。
この曲を聴くと「愛とは、変わることを許せる強さなのかもしれない」と考えさせられます。



