
2025年7月25日に公開されたDECO*27さんの楽曲「チェリーポップ」。
人気イラストレーターでありVTuberのしぐれういさんがイラストとコーラスを担当したことで、ファンの間では「ビジュが強すぎる」「世界観が可愛くて怖い」と話題になりました。
一聴すると明るくポップなラブソングのようですが、実はその裏にはDECO*27さんらしい深い心理描写が隠れています。
今回は、タイトルや歌詞、MVの細部から「チェリーポップ」に込められたメッセージを徹底考察していきます。
「チェリーポップ」というタイトルが意味するもの
まず注目したいのが、タイトル「チェリーポップ」。
一見かわいい響きですが、その裏には恋の儚さと独占欲という相反する感情が隠されています。
儚くて甘い恋の象徴「さくらんぼ」
さくらんぼは甘くて可愛いけれど、すぐに傷んでしまう果物。
この性質は、一瞬で終わる恋や、熱しやすく冷めやすい関係を象徴しているように感じます。
恋の“旬”が短いことへの切なさを、タイトルで表現しているんですね。
「一等賞」=誰にも渡したくない独占欲
歌詞の中に登場する「一等賞」という言葉。
これは「勝ちたい」という単純な意味ではなく、相手にとって唯一無二でいたいという強烈な欲求を示しています。
- 「他の誰にも奪われたくない」
- 「自分が一番でなければ意味がない」
という恋愛の執着心が見え隠れします。
可愛さの裏に潜む主人公の“二面性”
してほしい顔 第一位 pic.twitter.com/3jCbqmSFxx
— トマリ (@ttomarii) August 5, 2025
この曲の主人公は、一途なようで自己中心的。
純粋そうで、どこか計算高い。
そんな矛盾を抱えたキャラクターとして描かれています。
一等賞にこだわる自分と、離れていく現実
「一等賞しか興味がない」と言いながらも、重すぎる愛情に気づいている彼女。
その自己矛盾は、承認欲求と孤独の表裏一体を感じさせます。
実は、DECO*27さん自身が「一番より二番で常に上を目指したい」と語っていることから、この“逆の思想”は非常に興味深い対比になっています。
「好き」と「ちね」に込められた恋の毒
「チェリーポップ」で印象的なのが、「好き」と「ちね」という真逆の言葉。
一方は愛を、もう一方は憎しみや苛立ちを表しています。
この「ちね」という言葉、響きが子どもっぽくて可愛いのに、どこか攻撃的。
「ねちねち」のアナグラムとも読めるこのフレーズは、独占欲の裏返しや恋の中毒性を表しているのかもしれません。
つまり、「好きすぎて苦しい」――そんな感情がこの一言に凝縮されているんです。
「ドレミ」のフレーズが意味する“恋の始まりの怖さ”
歌詞の中で「ドレミ」が出てくるシーン、印象に残りますよね。
実はこれ、恋のはじまりに感じる恐怖や戸惑いを表現していると考えられています。
あるコメントでは、スタンダールの『恋愛論』を引用し、「ドレミ=恋の初期段階(感嘆・自問・希望)」を意味するという考察も。
そう考えると、「ドレミ怖い」という言葉は、抗えない恋に落ちる瞬間の不安と興奮を描いているのかもしれません。
しかもこの部分、実際に“ドレミファソラシド”の音階で歌われているのもポイント。
DECO*27さんらしい緻密な構成ですね。
MVに仕掛けられた「シンデレラ」へのオマージュ
MVを見ていて「どこかで見たことある…?」と思った方も多いのではないでしょうか。
実は今作、「シンデレラ」との繋がりが随所に散りばめられています。
- 主人公が空を見上げるシーンの星の回転エフェクトが同一
- 「さくらんぼのヘアゴム」が、今作ではピアスとして再登場
『シンデレラ』では「自分の変化」がテーマだったのに対し、今作は「相手の変化」を求めている。
これらを踏まえると、「チェリーポップ」の主人公は『シンデレラ』の“もう一人の自分”を描いた鏡のような存在なのかもしれません。
『ラビットホール』『テレパシ』との世界観のつながり
「チェリーポップ」は、過去作『ラビットホール』や『テレパシ』との繋がりも指摘されています。
『ラビットホール』の主人公が“誰にでも愛を振りまくタイプ”だったのに対し、『チェリーポップ』の主人公は“ひとりに執着するタイプ”。
まるで愛の広がりと狭さの対比を描いているようです。
DECO*27さんの作品群全体を通して見ると、恋愛の形が「共有」から「独占」へと移り変わっているのも興味深いですね。
しぐれういさんのイラストが生み出す「可愛いのに怖い」世界
かわい〜‼️‼️マストバイスタンプです🍒 https://t.co/DXsRy3NlNL
— しぐれうい🌂 (@ui_shig) September 27, 2025
MVの大きな魅力のひとつが、しぐれういさんの描くキャラクター。
ふんわり可愛いのに、どこか危うい雰囲気が漂っています。
特に印象的なのは、サビ後に目のハイライトが消える演出。
これは、恋心(ハイライトあり)から執着(ハイライトなし)への感情の変化を象徴しているようにも見えます。
可愛いだけじゃない、“恋の裏側”を描くビジュアル表現が見事です。
まとめ
DECO*27さんの「チェリーポップ」は、ただの恋愛ソングではありません。
独占欲、承認欲求、自己矛盾、そして恋の儚さ。
現代の恋愛が抱えるリアルな感情を、ポップな音楽で包み込んだ一曲です。
「甘くて、可愛くて、でもちょっと怖い」――
それが、この曲が多くの人の心に刺さる理由なのかもしれません。



