ピノキオピー『T氏の話を信じるな』徹底考察|歌詞・MVに隠された意味(初音ミク/重音テト)


2025年6月、ピノキオピーさんによるボカロ曲「T氏の話を信じるな」が公開されました。

初音ミクと重音テトが歌うこの楽曲は、耳に残る中毒性と、聴くたびに新しい発見がある奥深さで話題を呼んでいます。

この曲は、普通のボカロ曲とはひと味違います。

「自分たちは一体、何を信じて生きているのか?」という鋭いテーマが込められていて、まるで現代社会の姿を映し出すかのようです。

ここからは、MVや歌詞の意味をじっくり考察していきます。




二人の関係が映す“支配と依存”の構図


物語の中心にいるのは、初音ミクと重音テト。
二人の関係性がまるで「支配する側」「依存する側」のように描かれています。

それは単なるキャラクター演出ではなく、現代社会に生きる私たちの姿にも重なるように感じます。

重音テトが象徴する“甘い救済”の誘惑


重音テトは、ミクを導く「教祖」のようなポジション。
「裏技を使えば人生は楽になる」といった言葉で、心の隙間に入り込みます。

MVの中で見られる水晶玉や振り子の演出は、まるで催眠術のよう。
不安や疲れを抱えた人ほど、そんな言葉に惹かれてしまう──その心理をリアルに表現しています。

初音ミクが見せる“盲信の危うさ”

ミクはテトの言葉を信じ込み、次第にその思想に染まっていきます。
MVで印象的なのは、ミクのアクセサリーが増えていく描写。

最初は小さなバッジひとつだったのに、どんどん増えていく様子が、彼女が「T氏」に取り込まれていく象徴になっています。

輝く瞳の奥にあるのは、希望ではなく“思考を止めた安心”。
それがこの曲の怖さでもあります。

「T氏」は誰?SNSからAIまで広がる3つの説


最大の謎、それが「T氏」とは何者なのかという点です。
ネットではさまざまな説が生まれています。

① たつき涼さんモデル説

漫画家・たつき涼さんのイニシャル「T.R.」と結びつける説。

過去に「2025年に大災害が起こる」といった内容の作品を描いたことから、情報拡散と信頼性をテーマにしたこの曲と重ねる声もあります。

② SNSプラットフォーム説

「T」はYouTube(Tube)やX(旧Twitter)の頭文字。

SNS上で“自分の見たい情報だけを見る”状態こそが現代の洗脳だという見方です。
確かに、アルゴリズムによる情報の偏りは「T氏」の正体として非常に象徴的ですよね。

③ AIと愛の二重構造説

歌詞中で「AI」と「愛」が巧妙に重ねられており、人工知能が作り出すフェイク情報と、人が信じたい“愛”の形を対比させた解釈も。
「本当かどうか分からないものを信じる」──まさに今の時代を象徴しています。

「T氏」は私たちの心の中にいる


結論として、「T氏」とは特定の人物ではなく、私たち自身の中にある“信じたいもの”の象徴だと考えられます。

「自分に都合のいい情報」「優しく聞こえる嘘」

それらを無意識に信じてしまう現代人の弱さを、ピノキオピーさんは描いているのではないでしょうか。

ミクの“信じる”という選択が突きつける現実

曲の中盤で、ミクは一度「T氏を信じない方がいい」と耳にします。
しかし彼女は、不安に負けて再び信じる道を選びます。

「信じていたものが嘘だと分かっても、信じ続けなければ壊れてしまう」

この描写が、人の心理の脆さをリアルに表しています。
私たちもまた、“安心できる嘘”に救いを求めてしまう生き物なのかもしれません。

ラストに仕掛けられた“信じるな”の矛盾

終盤でミクは「騙されていた」と語り、T氏のアクセサリーを外します。
一見すると解放されたようですが、本当にそうでしょうか?

「騙されていた可哀想な自分」という新しい物語に依存しているだけかもしれません。
そして、最後に流れる「この歌も信じるな」という一文。

これによって、リスナー自身も“試される”構造になっています。

「T氏の話を信じるな」と言われて、それを信じた瞬間に矛盾が生まれる。
このループ構造が、この曲の真の怖さであり、魅力でもあります。

まとめ

 何を信じるかは、結局あなた次第

「T氏の話を信じるな」は、“信じること”の本質を問う作品です。

真実と嘘の境界があいまいな時代だからこそ、「何を信じるか」「誰を信じるか」を自分の意志で選ぶことの大切さを教えてくれます。

この曲を通して、私たちが日常で“当たり前に信じているもの”を一度見つめ直すきっかけになるかもしれません。

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