
あなたの歌声、ちゃんと「作品」として仕上がっていますか?
録音したままのボーカルは、まだ“素材”の状態です。
どんなに歌が上手くても、ノイズや音量のムラ、ピッチのズレなどで、せっかくの魅力が半減してしまうことがあります。
そこで必要なのが「ボーカルミックス」。
これは、録った声を磨き上げ、楽曲の中で自然に、そして魅力的に聞かせるための工程です。
この記事では、DTM初心者でも実践できるボーカルミックスの基本手順をわかりやすく解説します。
- 「ミックスって何から始めればいいの?」
- 「どこまでやれば完成なの?」
と悩んでいる方に向けて、3つの基礎(EQ・コンプ・リバーブ)を中心に紹介します。
読み終えるころには、あなたのボーカルがぐっと“作品らしく”聴こえるようになるはずです。
そもそもボーカルミックスとは?
ミックスとは、複数の音を混ぜてバランスを整える作業のことです。
ドラム・ベース・ギターなどをまとめて整えるのが通常のミックス。
一方、ボーカルミックスは「声」に特化して磨き上げ、オケになじませるための作業です。
つまり、「ボーカルのためのミックス」と考えてOKです。
なぜボーカルミックスが必要なのか?
それは、ボーカルの魅力を最大限に引き出すためです。
どんなに歌が上手くても、録ったままの声というのはまだ“素材”の段階。
ノイズがあったり、音量がばらついていたり、曲全体の中で浮いてしまったりします。
ボーカルミックスをすることで、その素材を“作品”に仕上げるのです。
いわば、原石の声を磨いて宝石にする作業と言えるでしょう。
ボーカルミックスのゴールとは?
数値的な基準や明確なゴールはありません。
耳で聴いて「これならリスナーに聴かせられる」と思えたら、それが完成です。
ただし注意点があります。
ミックス中に音量が上がると、人間の耳は“かっこよくなった”と錯覚します。
音量に惑わされず、「オケになじんでいるか」「抜けが良くなったか」に注目しましょう。
ボーカルミックスの3ステップ
- ノイズ除去
- ピッチ補正
- エフェクト加工
それぞれの役割を詳しく見ていきましょう。
① ノイズ除去(不要な音を消す)

たとえば・・・
- 衣擦れの音
- 咳や息を吸う音
- 部屋の反響音や扇風機の風音
こうした不要な音を削ることで、ボーカルがクリアになります。
最近は「iZotope RX」などのソフトで、部屋の残響だけを消すことも可能です。
② ピッチ補正(音程とタイミングを整える)

これは、歌の音程やリズムを微調整する作業です。
- 「高音が届かなかった」
- 「タイミングがズレた」
そんな部分を自然に整えることで、聞きやすく仕上げます。
よく「ピッチ補正はずるい」と言われますが、それは誤解です。
今どきのメジャーアーティストも、ほぼ全員が何らかの補正をしています。
それは「ごまかし」ではなく、楽曲をきれいに届けるための仕上げなんです。
ただし、歌が下手でもOKという意味ではありません。
ピッチ補正は“90点の歌を100点にするための道具”。
40点の歌を70点にする魔法ではないので、歌唱力の向上も大切です。
有名なツールとしては「Melodyne」や、DAW純正の「VariAudio(Cubase)」などがあります。
③ エフェクト加工(音を磨く)
ここが“ボーカルミックスっぽさ”を最も感じる工程です。
初心者の方は、まず次の3つを覚えてください。
これがいわゆる「3つの基礎」です。
- イコライザー(EQ)
- コンプレッサー(Comp)
- リバーブ(Reverb)
イコライザー(EQ)

特定の帯域の音量を上げ下げできるツールです。
- 「低音を少し削ってスッキリさせる」
- 「高音を持ち上げて明るくする」
など、声の質感を整えられます。
くぐもった声を明るくしたいときに特に効果的です。
コンプレッサー(Comp)

音量のバラつきを整えるツールです。
強い部分は抑え、弱い部分は持ち上げて、全体の聴きやすさをキープします。
たとえば、ミセスのようにAメロが静かでサビが力強い曲でも、常に一定の聴きやすさを保てるのはコンプのおかげです。
リバーブ(Reverb)

カラオケのエコーのように、声に空間の広がりを与える効果があります。
リバーブをかけることで、自然な奥行きや臨場感を演出できます。
エフェクト加工は、良い部分も悪い部分も強調してしまいます。
だからこそ、ノイズ除去とピッチ補正が超重要です。
ノイズを消していないと、リバーブでノイズまで響かせてしまう。
ピッチを直していないと、外れた音がより目立ってしまう。
つまり、ノイズ除去とピッチ補正はエフェクト加工の下準備。
ここを丁寧にやることで、仕上がりが格段に良くなります。
歌が上手い人は、ミックスも上手い
そう思っている人も多いかもしれません。
しかし実際はその逆。
ミックスは“素材を磨く”作業であって、もともとの歌が上手いほど仕上がりも良くなります。
そして興味深いのは、歌が上手い人ほどミックスも上手いということ。
とくに歌い手さんの中には、自分の声をどう聴かせたいかを深く理解していて、EQやコンプの使い方も非常に的確です。
個人的に「ボーカルミックスが凄く上手い」と感じるのが、超学生さん。
ショート動画などで公開されているアカペラ音源(ボーカルミックス後)を聴くと、声の抜け方や空気感の作り方が本当に見事です。
・アカペラ|アンノウン・マザーグース
・#ファタール #アカペラ #超学生 #gero
・アカペラ|Dec.(2番) #歌ってみた
超学生さんは、とにかく歌が上手い。
それに加えて、ミックスの基礎がしっかり身についているのが大きな強みです。
さらに注目すべきは、曲全体の設計力。
メインボーカルを引き立てるハモリや空間系エフェクトの使い方が絶妙で、楽曲そのものがより魅力的に聴こえるように計算されています。
ボーカルミックスの参考としても非常に優れているので、ぜひ一度チェックしてみてください。
まとめ
ボーカルミックスの基本は・・・
- ノイズ除去
- ピッチ補正
- エフェクト加工(EQ・Comp・Reverb)
この3ステップです。
最初のうちは、まずこの「3つの基礎」をしっかり使いこなせるようになりましょう。
慣れてきたら、サチュレーションやエンハンサーなど、上級エフェクトに挑戦してみてください。


