
DTMをしていると必ず出てくる言葉、「ローカット」。
何となく“低音を削る処理”だとは知っていても、「なぜ必要なのか」「どこまで削るのが正解なのか」を理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
実際、「全部のトラックでローカットしたら音がスカスカになった」や「ベースやキックの存在感がなくなった」
そんな悩みを持つ人は多いです。
この記事では、「意味のあるローカットを行うための考え方と実践のポイントを解説」します。
初心者〜中級者の方でも、ローカットの目的や使い分けを理解できる内容です。
読むことで・・・
- ローカットの正しい意味と役割がわかる
- どの楽器をカットすべきか判断できる
- 現代的な音作りに合ったEQの考え方を身につけられる
ようになります。
“とりあえずカット”から卒業して、音圧のあるスッキリしたミックスを作るヒントをつかんでいきましょう。
ローカットとは?

「ローカット」とはその名の通り、低音(Low)をカットする処理のこと。
つまり、音の中の20Hz〜200Hz付近の低域をEQで削ることを指します。
筆者はこの範囲(20〜200Hzあたり)を“ロー”と捉えており、EQ(イコライザー)のシェルビング機能で不要な低音をカットしています。
補足:シェルビングについて
EQには「シェルビング」や「ハイパス」など、低音を整理するための機能があります。
どちらを使っても不要な低域を整えられるので、自分が使いやすい方法でOKです。
シェルビングは、特定の帯域(低音や高音)をなだらかに持ち上げたり下げたりする機能です。
一方、ローカット(ハイパス)フィルターは、指定した周波数より下の音を完全にカットする処理です。
不要な低音をしっかり整理したいときは、主にこのローカット(ハイパス)フィルターを使うとわかりやすいでしょう。
なぜローカットをするのか?
ローカットの目的を一言でまとめるなら、音圧を上げるためです。
最終的にマスタリングでマキシマイザーをかけ、音圧を上げる段階で、低音から高音までのバランスが取れていないと、うまく音圧が稼げません。
特に低音は高音よりもエネルギーが強く、同じ音量でも人間の耳には“大きく”聞こえます。
そのため、必要のない低音が溜まりすぎると全体の音圧を圧迫してしまうんです。
だからこそ、必要のない低音をカットしてスッキリさせ、全体のバランスを整えることで結果的に音圧を稼ぎやすくなります。
ローカットすべき楽器と、してはいけない楽器
→ 100〜150Hz付近を中心に不要な低音を整理
ローカットを控えるべき: キック、ベースなど低音を担う楽器
→ 低域を切りすぎると全体の土台がなくなる
つまり、「低音が不要なトラックだけを的確にカットする」ことが重要です。
むやみにやると“スカスカなミックス”になります。
ローカットのやりすぎは危険!
ローカットの理想を言えば、「しないで済むのがベスト」。
なぜなら、低音を削るというのは本来“強引な行為”だからです。
無理にカットしすぎると、音の厚みや生っぽさが消え、結果として細くて迫力のないサウンドになります。
大切なのは、必要な部分は残し、不要な部分だけを丁寧に削ること。
つまり、「最小限のローカット」を意識するのがポイントです。
現代の音楽は「重心が下がっている」
近年の音楽は、昔に比べて重心が下がっています。
たとえば、以前は200Hz付近が中心だったベース帯域が、今では100Hzあたりまで下がるケースも多いです。
ヒップホップやモダンポップスの影響で、「低音をどっしり鳴らす」トレンドが続いています。
つまり、昔の教則本どおりにローカットしてしまうと、今の時代には「薄すぎる音」になる可能性があるんです。
現代的なサウンドを作るなら、ローカットを以前より“ゆるく”設定するのがコツ。
ミックスには流行りがあるので、最終的には耳で判断することが大切です。
まとめ
内容をまとめると
- ローカットは“音圧を稼ぐための手段”であり、目的ではない
- 不要な低音だけを、なぜ・どのくらいカットするのかを考える
- 時代やジャンルによって、ローカットの基準も変わる
つまり、「意味のないローカットをするな」というのは、考えずに惰性でEQをかけるな、音を聴いて判断しようという意味なんです。
あと、ローカットは、ただ低音を削るための作業ではありません。
目的は、“音圧を上げやすくするために全体のバランスを整えること”です。
すべてのトラックに一律で適用するのではなく、「どの音に、どんな理由で」行うのかを意識することで、ミックスの仕上がりは大きく変わります。

