
「楽器が弾けないけど、作曲ってできるの?」
そんな悩みを持つDTM初心者の方は多いと思います。
最近ではパソコン1台あれば、誰でも曲を作れる時代。
しかし一方で、「やっぱり楽器が弾けないと限界があるのでは?」と感じる人も少なくありません。
実際、何世代にもわたって愛される“名曲”の多くは、生演奏から生まれています。
では、DTMで作られた音楽はどうなるのでしょうか?
「演奏され続ける曲」になり得るのでしょうか?
この記事では、
- 楽器演奏と作曲の関係
- 名曲が長く愛される理由
- DTMが今どんな“新しい音楽文化”を生み出しているのか
この3つの視点から掘り下げていきます。
読み終える頃には、「楽器を弾けない=不利」ではなく「DTMだからこそ生み出せる音楽の価値」が見えてくるはずです。
楽器が弾けなくても、作曲はできる!
まずは結論から言います。
「楽器が弾けなくても作曲はできるし、素晴らしい音楽は作れます」
ただし、「それでも思うこと」はいくつかあります。
そこを今回、少し深掘りしていきますね。
「本物じゃない」と言う人の心理はどこから?
こうした言葉、あなたも一度は耳にしたことがあるかもしれません。
では、この発言は一体どんな心理から生まれるのでしょうか?
個人的な印象ですが、クラシックやジャズの演奏家たちは、お互いを深くリスペクトし合っていることが多いです。
しかしその一方で、ポップスや打ち込み音楽をどこか“下に見る”ような人がいるのも事実です。
同じように、長年楽器をやってきた人の中には、「DTMで作った音楽は偽物だ」と感じてしまう人もいるようです。
いわば、“本物の音楽”というマウント心理です。
でも、よく考えてみると、その根っこには世代ごとの価値観の違いがあるのではないでしょうか。
どの時代にも、新しい表現を否定する人はいます。
レコードが登場したときも、シンセサイザーが出たときも、「そんなのは本当の音楽じゃない」と言う人がいたはずです。
結局のところ、人は“否定することで自分を正当化したい”生き物なのかもしれません。
最近で言えば、「AI=よく思っていない」という人たちの心理もまさにそれに近いと思います。
「世代と音楽の関係」
ニューヨークタイムズに記事によると人は14歳のときに聴いた音楽を一生聴き続ける傾向があるそうです。
つまり、14歳の頃に夢中になった音楽こそが、その人にとっての「本物」なんですよね。
昭和世代ならギターヒーローが「最高」。
でも今の10代にとっては、DTMで作られたEDMや打ち込み曲が「最高」なんです。
だから、「打ち込み音楽は本物じゃない」という考え方は、単に時代の違いにすぎないと思います。
時代で変わる「価値観」と「本物」の定義
ギターの売上が落ちた時、エリック・クラプトンが「ギターはもう終わったのかも」と言ったのは有名な話。
でも、今の若者が聴いている音楽の多くはギターはありません。
ストリーミング時代では、ギターソロ部分を飛ばす人も多いそうです。
1曲あたりの時間も短くなっていってます。
最近は、1曲あたりの長さもどんどん短くなっています。
一昔前までは4〜5分が主流でしたが、今では2分前後の曲も珍しくありません。
なぜこんなに短くなったのか?
その理由のひとつは、やはりショート動画文化にあると思います。
TikTokやYouTubeショートの影響で、「短くてインパクトのある曲」のほうが、より多くの人の心に刺さるようになったんでしょうね。
とはいえ、4〜5分ある曲でも、転調・テンポ(BPM)・構成を大胆に変えるタイプが増えています。
YOASOBIの「アイドル」なんかは、まさにその代表例ですよね。
これを「悪い」と言うのではなく、価値観が移り変わっているだけなんですよね。
今の10代が大人になれば、「楽器演奏できなくてもいい音楽」が“普通”になっていくでしょう。
楽器演奏技術がもたらす「本当の強み」
とはいえ、筆者は楽器を弾く立場として感じるのは・・・
「楽器演奏技術には、替えのきかない魅力がある」ということ
たとえば、
- 思いついたフレーズをすぐ弾いて耳で確認できる
- 演奏中にインスピレーションが湧く
- 手癖から生まれるアドリブで新しい音楽が生まれる
こういった体験は、マウス操作では再現できません。
さらに、EDMのフレーズや展開も、実は楽器演奏由来のパターンを基にしていることが多いです。
つまり、楽器演奏の知識や感覚は、魅力的なフレーズ作りの土台になるんです。
「DAW操作=新しい演奏技術」という考え方
いまやDAWの進化によって、演奏技術を必要としない作曲環境が整いました。
たとえば、BTSやTWICEの作曲を手がける岡嶋かな多さん。
彼女は「ほぼ楽器を弾かない作曲家」として知られています。
DAWを使いこなすスキルが、現代では「楽器演奏技術」の代わりになっているんです。
つまり、「作曲には楽器技術は必須ではない」というのは、もう事実として受け入れていい時代だと思います。
ボカロPだと、ボカロP柊マグネタイトさん
インタビューの内容からすると、楽器も音楽理論もよくわかってないみたいです。
でも、ヒット曲を連発してます。
DTMは未知の領域
何世代にもわたって愛される名曲には共通点があります。
それは「演奏され続けていること」です。
オーケストラの曲にしても、クラシックの名曲にしても、ロックバンドの楽曲にしても、どれも長く愛される理由は“人が演奏し続けている”からなんですよね。
では、DTMで作られた音楽はどうでしょうか?
バンドの曲なら、コピーバンドが再現できます。
オーケストラやピアノ曲も、演奏者が次々と新しい解釈で披露します。
しかし、打ち込みの音楽をコピーで再現するのは、かなりハードルが高い。
今の環境では、まだまだ難しいのが現実です。
とはいえ、上達するにはコピーが欠かせません。
ピアノならコンクールがあり、腕を競い合う場もある。
一方、DTMの世界にはそうした“再現文化”や“競う場”がまだ少ない。
だからこそ、DTMはまだ開拓途中の未知の領域なんです。
まとめ
今回のテーマは「作曲に楽器演奏技術は必要か、不要か?」でした。
結論として、楽器演奏ができなくても作曲はできるし、素晴らしい音楽も作れる。
これは、もはや現代の常識になりつつあります。
しかし同時に、楽器を演奏できることの価値も、やはり揺るぎないものがあります。
演奏を通して得られるインスピレーションや即興性、そして“手から生まれる音楽”の魅力は、打ち込みでは完全には再現できません。
一方で、DAWの進化により、新しい「演奏技術」=操作スキルが生まれました。
これによって、楽器を弾けなくても多くのヒット曲が誕生しています。
DTMやAIを使った音楽制作は、まさに新しい時代の音楽文化です。
ただし、長く愛される音楽には「人が演奏し続ける」という共通点があります。
そう考えると、DTMで作られた曲が今後どのように“演奏されていく”のか
そこに未来の音楽の可能性があるのかもしれません。
DTMは、まだ開拓途中の未知の領域。これからどんな進化を遂げるのか、そしてどんな“名曲”が生まれるのか。
それを見届けるのは、今この時代を生きている僕たち自身です。
皆さんはどう思いますか?
「楽器演奏技術は必要か、不要か?」

