作曲が上達するいちばんの方法は「曲のコピー」だと思っています。
でも・・・
曲のコピーを頑張っているのに、なかなか成長を感じられない
弾けるようにはなったけれど、「それだけ」で終わってしまう
そんな悩みを抱えている初心者DTMerや作曲を始めたばかりの方も多いのではないでしょうか。
というわけで今回は「曲をコピーしたのに効果が出ない理由」というテーマでお話ししていきます。
- なぜコピーが最強の上達法なのか
- なぜコピーしても成長しないのか
- どうすればコピーで最速で作曲能力が成長できるのか
この3つを中心に解説します。
これを知らずに、ただコピーを繰り返しても上達はほとんど実感できません。
作曲能力を伸ばしたい初心者DTMerの参考になれば幸いです。
コピーは作曲力を伸ばす最短ルート
それは「真似ることこそ、学ぶことの基本」だからです。
「学ぶ(まなぶ)」の語源は「真似ぶ(まねぶ)」という言葉。
昔から武道や芸術の世界でも、師匠の型を忠実に真似ることから始まります。
音楽も同じです。
音楽というのは、まったく新しいものを生み出すよりも「既存の要素を組み合わせて作るもの」なんです。
音楽は既存パターンの組み合わせで構成されている
まったく聞いたことのないコード進行やリズムが出てくることなんて、ほとんどありません。
たいていの音楽は、過去に存在した要素の組み合わせでできています。
ジャンルが違っても、ベースにある理屈は似てます。
例えば、有名なコード進行「王道進行」「小室進行」「カノン進行」などは何千曲にも使われています。
それでも名曲が生まれ続けるのは、組み合わせ方や文脈が違うからなんです。
音楽は完全なゼロから生み出すものではなく、既存のフレーズや要素を組み合わせて作品を作るプロセスです。
そのためコピーで基礎となる「素材」を集めることができるんです。
コピーは思い込みを壊す
音楽を作っていると、いつの間にか固定観念が増えていきます。
- 音を右と左に振り分けて、全体のバランスを整える
- ギターは、多くても2本までにしておくもの
- サビは盛り上げないといけない
- サビは1種類だけ
- オシャレな曲を作るには、難しいコードを使わなきゃいけない
でも、実際に名曲をコピーしてみると「え、全然違うじゃん!」って気づくことが多いんです。
- 音の配置が左右で違う
- ギターが6本ある
- サビが2種類ある
- トライアド(3和音)だけなのにオシャレになる
コピーすることで、先入観を良い意味で壊すことができます。
そして、自分の理想とする「音楽の感覚」を、自分自身に学習していけるってわけです。
だからコピーは、作曲の基礎練習みたいなものなんです。
コピーしても伸びない5つの理由
とはいえ、コピーを頑張っても「全然上達しない…」という人も多いと思います。
上達しない理由をまとめました。
理由① 音楽理論をまったく勉強してこなかった
でも、基礎知識はある程度必要です。
なぜなら、音は目に見えないからこそ、感覚だけじゃなくて知識で補ったり可視化する必要があるからです。
「なぜこうなったのか」を自分で説明できないと曲にするのも難しいです。
たとえば、「なんか不安な響きだな」と感じる音も、理論を知れば「ディミニッシュコード」という名前で整理できます。
不安な響きを出したいなら、すぐに「ディミニッシュコードを使えばいい」っと判断できるわけです。
感覚だけでやると、物凄く時間がかかります。もしくは、音で表現できないかも。
感覚に言葉を与えることで、理解が深まり曲作りに役立つ知識になります。
逆に知識がないままだと、コピーしても「なんか良い」「なんか違う」で終わってしまいます。
余談ですが・・・
「理論を調べたけどわからない。けど、良い」
「理論的ではないけど、なぜか良い」
このような場合があります。そのときは「良いものは良い」っと感性を信じるようにしてます。
理由② ただ模写しているだけ
- 楽譜を打ち込んで終わり
- 耳コピして1回再現して終わり
- 分析しない
理由は音を「再現」するだけで、「理解」していないからだと思います。
「なぜこのリズムなの」「なぜこのコードなのか」「なぜこのメロディなのか」
ただコピーするのではなく、分析し理論で落とし込む作業が成長には必要不可欠です。
理由③ 目的を明確にしていない
- コード進行を学びたい
- サビメロを勉強したい
- サビをより盛り上げるためのBメロを研究する
- ベースラインを研究したい
目的を決めてからコピーすれば、学習効率は段違いです。
なんとなく1曲全部コピーするより、目的に持ってコピーするほうが成長につながります。
理由④ 数が少ない
1回コピーして「勉強になった!」と思っても、たくさんコピーした経験に比べると学びは少ないのです。
たくさんコピーするとパターンが見えてきます。
具体的な模倣から応用できる「法則」として、自分の引き出しに蓄えられるようになります。
- 「このコード進行、他の曲でもよく出てくるな」
- 「この音の動き、定番だな」
こんな気づきが増えるとオリジナル作品にも自然と活かせるようになります。
理由⑤ 「真似してはダメ」と思い込んでいる
音楽は部分的に真似してOKな文化です。
もちろん著作権的にNGな丸パクリはダメですが、コード進行やリズム、メロディの一部を取り入れることは問題ありません。
むしろ「真似してはいけない」と思うと、発想が狭くなってしまいます。
特に練習で作曲しているときは、思い切って真似してOKです。
あと余談ですが、Mobile VOCALOID Edito(スマホのボカロが作れるアプリ)は公式で替え歌がOKな場合もあります。
効果を10倍にするコピーのやり方
コピーの質が劇的に上がるのでおすすめです。
方法① すべてCメジャーとディグリーネームに直して記録する
DAWでコピーをするとき、曲ごとにキーが違うと分析がしづらくなります。
そこで、いったんCメジャーキーに統一してメモしておくのがおすすめです。
理由はシンプル。
どんな音楽理論書でも、基本はCメジャーで説明されているからです。
つまり、最も理解しやすい「基準キー」だからです。
例えば、小室進行の場合だと・・・
Fメジャーキー「Dm→B♭→C→F」この進行をCメジャーキーにすると直すと「Am→F→G→C」になります。
これを繰り返して分析していくうちに、コードの役割や響きの関係が感覚的に掴めるようになります。
ディグリーネームとは?
キーが変わってもコードの「機能」が共通して理解できるのがメリットです。
例えば、同じ小室進行でも・・・
Fメジャーなら:Dm → B♭ → C → F
どちらも「Ⅵm → Ⅳ → Ⅴ → Ⅰ」と表せます。
このようにディグリーネームで統一して記録すると、他のキーでも混乱せずに分析できます。
代表的なコード進行の例
丸サ進行:ⅤM7 → Ⅲ7 → Ⅵm7 → Ⅴm7 → Ⅰ7
カノン進行:Ⅰ → Ⅴ → Ⅵm → Ⅲm → Ⅳ → Ⅰ → Ⅳ → Ⅴ
方法② 音符以外もコピーする
「コピー」と聞くと、音をそのまま写すことだけを指すように思いがちです。
しかし、学べるのは音符だけではありません。
実際は、音以外の要素にも多くのヒントが隠れています。
たとえば、こんなポイントも分析してみましょう
→どんな楽器を重ねているか?FX(効果音)も大事
▶曲の流れ
→Aメロ → Bメロ → サビの構成はどうなっているか?
▶転調のタイミング
→どの部分でキーが変わるのか?
▶各構成の小節の長さ
→イントロやAメロが8小節固定とは限らない。2回目のサビでは微妙に変化していることもあります
こうした構成面のコピーは、音楽理論や音感に自信がなくても取り組みやすく、作曲の設計力を鍛えるのに最適です。
楽譜が書けなくても、次のような方法で分析できます。
- テンポを確認
- 小節を数える
- 曲の流れを把握する
- 構成や気づいたポイントをメモする
パターンを整理するだけでも、曲作りの「全体像」を理解する力が自然と身についていきます。
方法③ メッセージ性を深掘りする
筆者が最も作曲、コピーをするときに大切にしてることです。
例えばラブソングでも、込められたメッセージはまったく違います。
- 失恋した自分を慰める曲
- 元恋人への未練を描いた曲
- 新しい恋に踏み出す前向きな曲
こうしたメッセージをイメージしながらコピーすると・・・
「この感情を伝えるには、このコード進行が必要だ」
「盛り上げるためには、Bメロで一旦落とす構成が大切だ」
といったポイントが自然と見えてきます。
音符だけでなく、曲全体の作り方や表現の仕組みまで理解できるのが、音符以外のコピーの醍醐味です。
まとめ
作曲を上達させる一番の近道は「曲のコピー」です。
しかし、ただ音をなぞるだけでは、弾けるようになっても成長を実感しにくいものです。
コピーは単なる音の写しではなく、曲全体の構成や使われている楽器、コード進行、メッセージ性まで学べる最強の上達法です。
1〜2曲コピーしただけでは得られる学びは少なく、繰り返しコピーすることでパターンや定番フレーズが見えてきます。
その知識が、自分のオリジナル曲にも自然と活きてきます。
また、「真似=悪いこと」と思い込む必要はありません。
練習の段階では思い切って真似することで、発想力や応用力が育ちます。
音楽は0から100を生み出すものではなく、既存のフレーズやアイデアを積み重ねて100を作る創作です。
だからこそ、まずはコピーで「素材」をたくさん集めることが、上達への最短ルートになります。

