
「コンプレッサーって、なんとなくかけてるけど正直よくわかってない…」
そんな悩みを持つ人は少なくありません。
DTMを始めたばかりの頃は、コンプレッサーの設定項目も多く、「とりあえずプリセットでOK」となりがちですよね。
しかし、コンプレッサーの仕組みと使い方を正しく理解すれば、ミックスの完成度が一気に上がります。
特にボーカルやドラムなど、音量差のあるトラックを自然にまとめたいときに欠かせないのがこのエフェクトです。
この記事では・・・
- コンプレッサーの基本的な役割
- 初心者がやりがちなNG設定とその理由
- 実践で使える設定の目安
読むことで、「なぜコンプをかけるのか」「どうすればバランスよく使えるのか」がはっきり理解できるはずです。
感覚ではなく“耳でコントロールできるミックス”を目指しましょう。
コンプレッサーの基本機能をおさらいしよう

- 大きい音を小さく、小さい音を大きくして音量を鳴らす
- 音にキャラクターを与える
ただし、2つ目の「キャラクター付与」は機種によって異なり、純粋に音量をコントロールするだけのコンプも存在します。
つまり、根本的な役割は「音量をならす(整える)」ことです。
最もわかりやすい例はボーカルです。
人間の声は一音ごとに音量のばらつきがあり、訓練されていない限り、強弱の差がかなりあります。
音の大きい部分は浮き、小さい部分は埋もれてしまう。
結果として「聴きづらいミックス」になってしまうのです。
そこでコンプレッサーを使い、音量を一定に保つことで、ミックス全体のまとまりが良くなります。
ボーカル以外にも、「音量差が大きい楽器全般(ギター、ドラムなど)」にも有効です。
コンプレッサーをうまく使えば、音圧が上がって引き締まった印象のミックスに仕上がります。
しかし、「とりあえず全部にコンプをかける」はNG。
次に、具体的な「やってはいけない使い方」を3つ紹介します。
NG① ダイナミクスを潰しすぎてしまう
ライブなどで、サビに入った瞬間に「ズガーン!」と盛り上がる感動がありますよね。
あれは、音量差(ダイナミクス)があるからこその感動です。
つまり、音楽で感情を動かすためにダイナミクスは不可欠なのです。
一方で、コンプレッサーは音量差をなくす機能。
つまり「ダイナミクスを表現する」ことと「コンプレッサーで均す」ことは相反します。
ではどうすればいいのか。
答えはシンプルで、“ほどほどにかける”ことです。
強くかけすぎると音がつぶれ、抑揚のないつまらないサウンドになります。
逆に全くかけないと音が浮いたり埋もれたりします。
このバランスが“ミックスの上手さ”に直結します。
- レシオ(Ratio):ボーカルなら 2〜4 程度
- ゲインリダクション:3〜6dB 程度が目安
ジャンルによっても適正は異なります。
アコースティック系は自然に、EDMならしっかり潰すなど、自分の好きなジャンルの音を参考に耳を鍛えましょう。
NG② 埋もれてしまうセッティングになっている
この原因の多くは、アタックタイムとリリースタイムの設定ミスです。
- アタックタイム:音が入力されてから圧縮が始まるまでの時間(立ち上がりの処理)
- リリースタイム:圧縮が終わって元の音量に戻るまでの時間(余韻の処理)
逆に遅くすると、立ち上がりが残り「前に出る音」になります。
たとえばスネアなら前に出したいので、アタックは遅め。
ハイハットのように耳に刺さりやすい音は、アタックを速くして潰すのが効果的です。
- アタックが遅い → リリースは速め
- アタックが速い → リリースは遅め
基本的には「アタックの逆を取る」と覚えましょう
NG③ 音がかっこよく聞こえて錯覚している
つまり、コンプレッサーをかけて音量が上がっただけで「お、良くなった!」と思い込むケースが多いのです。
しかしそれは錯覚。
単に音が大きくなっただけで、音質が良くなったわけではありません。
「コンプレッサーのON/OFFで音量を同じにして聴き比べる」こと
やり方は簡単。
- コンプレッサーのアウトプットゲインを調整
- バイパス(ON/OFF)を切り替えながら、耳で聴いたときの音量が同じになるようにする
この状態で比較すれば、「本当に良くなっているのか」を冷静に判断できます。
まとめ
コンプレッサーは、DTMでのミックスに欠かせないツールですが、ただ「なんとなくかける」だけでは逆効果になることもあります。
今回紹介したように、基本を理解して目的に合わせて使うことが何より大切です。
・コンプレッサーの本質は「音量を整える」こと
大きい音を抑え、小さい音を持ち上げることで全体を聴きやすくします。
・やりすぎは禁物
強くかけすぎると、ダイナミクスが失われたり、音が奥まって埋もれてしまう原因になります。
・設定よりも耳で判断する習慣を
アタック・リリース・レシオなどの数値より、「どう聴こえるか」を基準に調整するのが上達の近道です。
コンプレッサーを「難しいツール」と感じるのは最初だけです。
慣れてくると、音のまとまりや抜け感をコントロールできる強力な武器になります。
まずはこの記事で学んだポイントを踏まえて、自分のボーカルやドラムに少しずつ試してみてください。
「なぜかミックスがまとまらない」という悩みが、きっと一歩前進するはずです。

