
2024年11月に公開され、特徴的なMVと謎めいた歌詞で話題を呼んだDECO*27の「モニタリング」は、ついに9000万再生を超えた傑作です。
そこへ2025年9月、「モニタリング (Best Friend Remix)」が公開されると、ファンの間で新たな解釈と議論が巻き起こりました。
原曲の“どこか歪んだ愛情”と対照的な、爽やかで優しいRemix。
しかしその“爽やかさ”の裏には、原曲をさらに深く、複雑にする新たな謎が隠されています。
本記事では原曲とRemixを歌詞・MVの変化から比較し、「二人の関係はどうだったのか」「すれ違う心はどこへ向かうのか」を徹底的に考察します。
原曲とRemixで変わった言葉遣い──雰囲気の“反転”
Remixを聴くとまず驚くのは雰囲気の変化です。
原曲の狂気的なトーンは影を潜め、軽やかで親密な空気に生まれ変わっています。
具体的な歌詞比較は以下の通り。
- 原曲:「バレてるんだし言っちゃえよ 効いてんの?」
- Remix:「バレてるんだし言っちゃえば 聞いてんの?」
原曲の「効いてんの?」は嘲りにも取れる問いかけでしたが、Remixの「聞いてんの?」は心配と寄り添いを感じさせます。
同じ文脈でも“受け取り方”が丸ごと変わる──それがこの2バージョンの肝です。
もう一つ代表的な対比:
- 原曲:「弱音ヒトカラ/舐め取って 飲み干したい」
- Remix:「弱音ヒトカラ? いいんじゃない?/分け合って 乗り越えたい」
原曲は主人公の孤独を欲望の対象にしてしまう語りがあり、Remixはその弱さを肯定して支えようという言葉になります。
ここから読み取れるのは――同じ場面を“誰が・どう見ているか”で世界が変わる、ということです。
Remixが“真実の優しさ”、原曲は主人公の妄想だった?
もっとも直感的な受け取り方はこれでしょう。
Remixのミクは親身で優しく、孤独な主人公に寄り添おうとしています。
一方で原曲のミク(もしくは主人公の脳内で再構築されたミク)は、すべてを独占欲や執着に変換してしまう。
たとえばRemixの──
- 「分け合って 乗り越えたいんだってば」
- 「つらい時は弱いくらいで丁度いい あたし、きみの味方だよ」
といった言葉は、正しく受け取れば純粋な友情です。
けれど主人公は「舐め取って 飲み干したい」や「それでも好きだよ」と解釈してしまう。
その認知のズレが原曲の不穏さを作り出している、という読みです。
MVでもその対比は明確です。
原曲ではぼやけたひまわりが幻覚のように扱われていたのに対し、Remixではくっきりと実体を持つひまわりが描かれる。
花言葉的にも「あなたしか見ない」という意味を持つひまわりは、むしろミクの純粋な好意を示しているのでは──と考えられます。
その逆――Remixこそ“仮面”だった?
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ただし、必ずしも「Remix=無垢な真実」とは限りません。
MVのラストでドアを開けた主人公が目にしたのは、原曲の狂気めいたミクの姿でした。ここから発生する逆説的な解釈があります。
つまり、Remixの“優しさ”は仮面で、内面では激しい独占欲を隠していた――という見方です。
Remixの歌詞にも「きみが欲しい」といった過剰な表現や、裏で繰り返される「見たい見たい見たい…」のコーラスなど、不穏な余韻を残す要素は確かにあります。
この視点に立つと、「Best Friend」という仮面で相手の心をゆるませ、油断した瞬間に本性が現れる──
そんな二重構造が見えてきます。
どちらのバージョンを信じても結末は決して安寧ではない、という暗さがここにあります。
Remixは原曲の“過去編”かもしれない
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もうひとつ面白い読み方は時間軸の逆転です。
Remixは原曲の「過去に話」つまり前の出来事を描いた物語
もともと純粋だった関係が、少しずつ歪んでいく過程を描くという見方。
最初は本当に親身な友人だったミク。
それが主人公の不安定さや依存を招き、やがて主人公側の認知が捻じ曲がってしまう。
結果として原曲のような妄想的世界が生まれた――
Remixの最後に見える「狂気の兆候がその転換点だった」という筋です。
この説は物語に悲劇性を与えます。
光だった関係が徐々に侵食されていく過程は、ただ怖いだけでなく、救いのなさゆえに胸を締め付けます。
まとめ
本当に狂っていたのはどちらだったのか。
それとも、寂しさに惹かれ合ううちに、2人とも少しずつ壊れていったのかもしれません。
答えは一つではありません。
そしてそれこそがDECO*27という作家性の巧みさでしょう──
「どの視点を取るか」で物語の真相が変わる設計になっている。
タイトルの「モニタリング」は、もしかすると私たちを含む“見る側”への問いかけでもあります。
私たちはいつも、自分の主観という色眼鏡を通して世界を見ています。
2つの「モニタリング」を見返すことで、その“色”が何色なのかに気づけるかもしれません。


